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又蔵の火(藤沢周平)

2015/06/08 (月) | カテゴリ:本

藤沢周平著『又蔵の火』
闇の中の主人公に当たる一点の光が暖かさを産む。

又蔵の火(裏表紙より)

表題作は、歴史の傍らに埋もれた小さな事件を素材に描く異色短編小説羽州荘内藩・土屋又蔵と丑蔵。叔父・甥としてつながる両人の同族相討つ悽愴無惨の果たし合いの一部始終を、抑制された筆致で描き出し、異様な興奮と感動を呼んだ。ほかに「帰郷」「賽子無宿」「割れた月」など、この作家初期の秀作を収める。

レビュー

作者自身も認めている暗い作品が多いが、消して冷たいものばかりではない。
暗い宿命を背負った主人公たちは、闇に包まれ消えていく。
しかし闇の中に消える彼らには一点の光が当たり、そのコントラストで光の暖かさが伝わってくる。
主人公のやり切れない結末や暗い運命に目を悲しむのではなく、彼らにも互いに気遣う暖かい人の思いにも目を向けるべきだと思う。

いちばん気に入っているのは【恐喝】
竹二郎は、賭場の仲間と借金返済の催促で結城屋の若旦那を脅した。
その若旦那が借金の形に連れてきたのは、足を痛めた竹二郎に肩を貸し、手当をしてくれた女だった。

女を助けようとし深い闇に襲われる竹二郎。
その胸に浮かび上がったのは、幼い頃自分を庇ってくれた従姉おたかの姿だった。

決してハッピーエンドではない。
おたかがさんざん忠告してくれたにもかかわらず道を外した竹二郎が、死の間際になって自分の居場所がおたかだったと気付いたのはもの悲しい。
しかし哀惜とともに暖かさが迫ってくるのは、ずっと自分の味方だったおたかを思い出したからだろう。
雪明かり』にも収録されている作品。

藤沢周平の作品は精緻に描いた人情の機微が魅力だが、それだけではなく文章そのものの心地よさにもある。
【恐喝】の最後の一行は、読んでいてうっとりしてしまうほどだった。
竹二郎が行くところは、おたかがいるところしかなかった。子供のときからそうだった。その道は夜の底を縫って、ひと筋仄白く北にのびていたが、釜ヶ谷の方角の空は遥かで、深い闇だった。

収録作品

又蔵の火、帰郷、賽子無宿、割れた月、恐喝。

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