盗賊会社(星新一)
2015/07/13 (月) | カテゴリ:本
星新一著『盗賊会社』
核心を突く鋭い視点と未来を予測する柔らかい視野のショートショート36編収録。
核心を突く鋭い視点と未来を予測する柔らかい視野のショートショート36編収録。
盗賊会社(裏表紙より)
私は盗賊株式会社の社員。泥棒ごっこのおもちゃの製造販売の会社ではない。れっきとした、泥棒を営業とする会社だ。そんな仕事があったのかと内心うらやましがる人も多いかもしれない。平凡な日常のくり返しにあきあきしている人ならば……。 表題作の「盗賊会社」をはじめ、斬新かつ奇抜なアイデアで、現代社会を鋭く、しかもユーモラスに風刺する36編のショートショートを収録。レビュー
核心を突く鋭い視点、未来を予測する柔らかい視野。そんなショートショートを36編収録。
収録作品の中でも【新しい社長】【ぼろ家の住人】【あわれな星】【善意の集積】【なぞの青年】【無料の電話機】が気に入っているが、とくに【ぼろ家の住人】がいい。
【ぼろ家の住人】
ある番組制作の担当者が、哀れな生活をしているという老人を訪ねた。
その老人は生活保護も受けず極貧を貫き、誰にも会いたくないと言うばかりだった。
苦心した番組が電波となって散っていく。
そのことに虚しさを感じていた男のエゴが国を破滅させる。
しかも、その原因は老人と男にしか分からないのだから、たちが悪い。
老人の正体にも驚愕。
また作品とは別に、あとがきの中の新聞勧誘員に対する星新一の問いかけが見事で、印象に残っている。
新聞の勧誘員が来ると、私は「日経にまさる点を五つあげてみてくれ」と言う。すると、妙な表情になって帰ってゆく。義理がたさでもあるが(星新一は日経を購読していた)、企業の動きに興味があるのだ。