霧の果て―神谷玄次郎捕物控(藤沢周平)
2015/01/12 (月) | カテゴリ:本
藤沢周平著『霧の果て―神谷玄次郎捕物控』
人生の霧に包まれた玄次郎の行き着く果て。
人生の霧に包まれた玄次郎の行き着く果て。
霧の果て―神谷玄次郎捕物控(裏表紙より)
北の定町回り同心・神谷玄次郎。探索の手腕は卓抜、加えて冴えた剣技の持主なのだが、上ツ方の評判は芳しくない。このはぐれ同心は、馴染んだ女将の料理屋の二階に起臥する自堕落者なのである。……そんなある日、川に女が浮いた。死体の頸には絞めた紐の跡と針で突いたような小さな傷。あいつが帰ってきた、玄次郎は呟いた。レビュー
北の定町回り同心・神谷玄次郎が活躍する捕物帳。一話完結で八話が収録されている。
玄次郎は、定町回り同心としてさまざまな事件と関わり合いつつ、父母妹が亡くなるきっかけとなった事件の真相を追い、明らかにしていく。
見事な手腕で事件を解決していく様子は気持ちがいい一方、事件の真相が分からないことで、いつまでも両親と妹の死を引きずるしかなかった玄次郎の憂いはもの悲しい。
結末はやりきれなく切ないものだが、一人の女性が心の拠り所になっていることが、どんなに心強く心安まることだろうか。